頭から蒸気の記

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荒川アンダーザブリッジ・中村光の美しい「めくり」の技術

「聖☆おにいさん」でブレイク中の中村光さんだが、「荒川アンダーザブリッジ」
も相当おもしろい。

なかでも私がほんろうされてしまったのがいわゆる「めくり」の技術。
マンガの技法上、見開き左側の最終コマは次のページを「めくらせる」ために
「期待をもたせる」「秘密をほのめかす」「オチの前ふりをする」などの
効果をもたせるそうなのだが、これが実にうまい。

この「めくり」はTVドラマなどでのCM前に当たると思うのだが、
一時間もののTVドラマならオープニングあけを含めて多くて四回ほどで
あるのに対して、マンガの場合は20ページ掲載で9回ほど「めくら」
せなくてはならない。

しかしこれはあくまで理想で、シナリオにしてペラ10枚ほどもないで
あろうマンガで、そんなにたくさんのフリ・ヒキをつくるのは非常にむずかしい
だろうことは想像に難くない。
私の読書実感でいうと、「めくり」の技術を効果的につかっているのは
ストーリーマンガで一掲載で多くて5〜6回であろうか。(シナリオにあらわれるベース)

そして「荒川アンダーザブリッジ」である。
基本的にギャグマンガなので、もちろんフリ→オチは基本なのであるが、大きめの
ギャグを(たとえば)20枚の原稿で10個いれるとなると、ひねりだすだけでも
相当むずかしい。
しかもメインストーリーがちゃんとあるギャグマンガだから、それらのギャグを
プロットからはずれないよう、いやむしろプロットをすすめるように配置しなくて
はならない。

以前も「笑わせながらその隙にストーリーを進める」技法について書いたが、
ギャグの量と、それらが律儀に「めくり」という基本技術を踏んでいるという
質の面において、本作は秀逸である。

しかもこの「ギャグをかましながらストーリーを進める」場合と、
「単に前ふり→オチという純粋なギャグ」がおりまぜられていることによって、
「荒川アンダーザブリッジ」は読者である私たちに別の「めくり」の楽しみを
与えてくれる。

つまり、「次のページで、笑わせてくれるのか? 泣かせるようなドラマ展開を
してくれるのか?」と予想する喜びである。

しんみりさせる展開で、実はそれは単なる前ふり→予想を裏切って笑わせる、
というのは、一般的な笑いの手法だ。
しかし逆に、「これは前ふりだからギャグだ。どんなオチだろう?」と思わせて
おいて、胸の奥にひびくような一言が待っている。

これは実に効果的だ。
こちらは笑う気まんまんであるところへ、ぽろっと心の琴線にふれるようなセリフ
がとびだす。ふいをつかれるったらない。
まあ、反則だといえそうなくらいの不意打ちだ。
しかも、読者は「めくって」みなければ「笑いか、泣きか」がわからない。

まさにマンガならではの「めくり」の真骨頂だと思う。
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